東京地裁一審第11回公判午前 証人尋問 証人:Jさん(昔からの知人)

宮前一明さんの遺品に、公判資料のほんの一部がのこされています。

東京拘置所と名古屋拘置所では総量規制(房内で持っていていい私物の量)が異なり、名古屋の方が圧倒的に少なく、公判資料は一般人に宅下げできませんので、移送されてからは公判資料の大半を処分せざるをえませんでした。

遺っていたものは本当に大切で重要だとご本人が思われているものと思います。

以下のものが遺されていました。

・判決文

・自首調書

・精神鑑定を行った医師の証人尋問

・3人の知人の証人尋問(昔からの知人、オウム古参信者2名)

これからは、重要な部分を中心に少しずつ上げれる部分は上げていこうと思います。個人情報はもちろん伏せます。イニシャルも全く関係ないアルファベットにしております。

<東京地裁一審第11回公判午前 証人尋問>

証人:Jさん(宮前一明さんの養父母の知人で子供の頃からの知り合い)

(前略)

−(弁護人)一明さんというのは、Jさんから見ると、どんな性格の少年というふうに記憶がありますか。

まず、きちょうめんすぎるくらいきちょうめんで、そしてまじめなのは間違いなかったんですが、中学校のころから、お金がなくて学校に入れない、上の学校に行かれないというときに、奨学資金というのがありまして、それを借りて、もっとも私が保証人になりましたけれども、ちょっと貧困なもので、親戚のものも保証人にならないというのが耳に入りましたもので、だったら私がなってあげましょうということで、私立だったら月謝なども少し高いもので、是非県立高校に入りたいということで、まあ見事、行ってくれました。

−一明さん自身は、やっぱり勉強は、自分である程度のところまでいきたいという希望は持っておったんでしょうね。

そうですね。

−生活保護家庭ですから、おっしゃるようにお金がなかったんでしょうけれども、自分では、なにかアルバイトをして収入を得ていたということもあるんでしょうか。

あります。新聞配達をやったり、そして冬休み、夏休みには、必ずドカタと言いますかね、今の土木作業員のような仕事をやりまして、学資を稼いでおりました。

−それは、まだ中学生のころですか。

ええ、中学のときも、高校のときもですね、ずうっとです。

−そんな小さいのに、ドカタみたいなことはやれるんですか。

子供でもできる、ちょっと、材料の運搬とか、手元なんかのような仕事、やったのを僕は見ていますから。穴掘りとか。まあ、今は機械がありますけれども、あの当時はまだ。

−さっきまじめとおっしゃいましたけども、学校にはきちっとしっかり、休まずに通っていたということでしたね。

はい、間違いありません。

−何かけんかをするとか、悪さをするとか、そんなことはありませんでしたか。

もう、一切ないですね。

−一明さんは、高校を出てその後就職していますけれども、大学に進学したかったというようなことは聞いておられますか。

ええ、何度も、四、五回聞いたことがあります。

−それでも、結局大学に行けなかった理由については、どういうことが原因だというふうに聞きましたか。

結局、生活保護のような生活をしていますから、早く社会に出て、大学に行くよりもお金のほうが先だというのが第一だったと思います。

−ちょっとお尋ねするのを忘れましたが、お母さんも働いてはおられなかったんですか。

ええ、そのようですね。ちょっと病弱で、働けるような状態ではなかったと思います。

−学校を卒業した後、どんな仕事をしていたかということは、Jさんは知っていらっしゃいますか。

何か小さな建設会社のようなところに、ちょっといたように記憶あります。

−そこはほんのわずかな期間だったと思いますけれども、その後のことなんかは、聞いておられますか。

あとは、出版会社のような会社で、営業をやっていました。そして、製薬会社に入社しまして、成績が良くて、すぐ、主任だったか係長だったかわかりませんが、一年くらいで昇級したのを覚えています。

−就職したあとも、Jさんとのお付き合いと言いましょうか、そういうものはあったんでしょうか。

ええ、時々山口県のほうに来たときには、必ずよってくれました。

−その時はどんな話を一明さんとするんですか。

そのときは、今、一生懸命やっているから、これからも頑張るということでした。

−何か、お父さんのことをよろしくとか、そんなようなことを言っていたようなことはあったんでしょうか。

それはもう、来るたびに言っていました。

−一明さんは、両親に対する、大きくなってからで結構なんですけれども、そんなふうな感情を持っておったというふうに感じていますか。

幼少のころに理由もなく叩かれたりしたことは、少しくらい私にぽつぽつと話したことはありますけれども、それを話す割りには、お金を持っていったり、なにかいるものはないかとか、近所を通ると必ずよっていました。

−そうすると、いわゆる親孝行のほうだというふうに伺ってよろしいんでしょうあ。

はい、間違いないです。

(中略)

−一明さん、オウム真理教に入信するわけですけれども、このオウムに入信をしたということは、Jさんは全くご存知なかったわけですね。

ええ、オウム出版とかいって、出版会社と思っていたんです、私は。

(中略)

−ところが、平成二年二月頃ですか、突然、一明さんがJさんのところを訪ねてきたということがありましたね。

はい。

−それは、奥さんのSさんも一緒にきたんですか。

はい、一緒です。

(中略)

−相談の内容というのは?

まず、アパートを紹介してくれということで、(アパート詳細)へ紹介しました。

−どうして帰って来たかというようなことについて、理由は言っていなかったですか。

ええ、そのときは言っていなかったです。

−Jさんにそういうことを頼んでいるときの様子、何か変わったことはありましたか。

変わったことというよりも、何かにおびえているというのか、追われているというのか。まあ、何かがあるのだと私は直感しました。

(中略)

−具体的に、何かそう感じられるような行動とか、そういう面で何かそういう具体的なことはありましたか。

まず、二月といってもあまり寒くないときでも、襟を立てて、サングラスのようなものを掛けまして、そして、何て言ったらいいか、人目をはばかるような感じは受けました。

(中略)

−家庭教師とか塾は、その後非常に順調にいっていたようですね。そういうふうにお感じになっていらっしゃいましたね。

はい。

−そんなふうに順調にいった理由について、Jさんとしては、どんな点が気がつかれたところでございましたか。

これは、塾の生徒の親が非常に気に入りまして。60人か70人いたと思いますが、ほとんどすべての親が気に入りまして。岡﨑君を。なぜかという理由は、ある母親に聞いてみたんですが、すごくきちょうめんで厳しいと

それで、子供が性格が変わったと。要するに、よくなったということです。それで、子供の方も、怒られてもあそこはいいと。ほかの塾に変わる考えはないというようなのをいろいろ聞きましたもので、私は、ああ、よかったなと、そのときは思っていました。

(中略)

−数学といっても、別に一明さんはそういう教師の免許を持っているとかいうわけじゃないでしょうから、教える内容というのは、どうやって勉強したというか、それについて何か知っていることはありますか。

記憶によりますと、高校時代から割合数学が得意だったようです、普通よりも。それも知っているんですけれども。そして、現代の塾に合わせるためには、自分も勉強しなければならないというんで、夜も寝ずに、ずっと電気がつきっぱなしになっていたことも度々ありました。それで、何をやっているんだと聞きますと、勉強しなきゃ、だんだんレベルが上がって行くもんで、奥も生徒と一緒に勉強しなければならないと言って、やっていました。

(中略)

−一明さんの趣味なんですけれども、趣味としてはどんなものがありましたか。

ある程度の読書と、ゴルフですね。

−ゴルフは、随分好きだったようですね。

はい。

(中略)

−ゴルフ以外、例えば酒とか、あるいは旅行をするとか、そんなことはなかったんでしょうね。

ちょっと記憶にないですが。

−酒もほとんど飲まない。

酒は、もう、たばこも。私がたばこを吸うと、こうやって嫌がるくらいですから。

−犬を飼っていたようですね。

はい。

−動物を飼うのは好きだったんですかね。

ええ、そうです。

−それから、ちょっと話が変わりますけれども、先ほど、最初の頃は非常におびえていた様子があったというふうにおっしゃいましたね。

はい。

−その後ですけれども、そうやって塾が順調にいっておったころですけども、そのころはそういう不安の感じた様子とか、それはどんなふうになりましたか。

徐々に、だんだん落ち着いてきまして、ああ、また中学、高校時代の一明君にまた戻ったなというような印象を受けました。

−何かちょっと、不自然というか、心配事があるような様子とかというのは、感じられませんでしたか。

ありました。

落ち込んでおるというか、話しかけても即返事ができなくて、はっ、ということも再々ありました。

−そういう心配事の理由については、しばらくたってJさんもお話は聞いたんでしょうか。

はい、ある程度は聞きました。

−そうすると、オウムにずっと入信していたときのこととか、そんな話も少しずつ話をするようになったということでしょうか。

はい。

−今回起訴されている、坂本弁護士さん一家の事件ですね、そのことにつては、彼が何かかかわっているという話は、Jさんにしたということはあるんでしょうか。

ええ、あります。

−それは、いつごろその話を聞きましたか。

はっきりわからないですけれどもね。(中略)

初めから、この子がそんなことはないというのを、うそと信じて僕は聞いていますもので。

−最初は、Jさんには、自分はどんなことをやっているという話をしたんですか。

だんだん、私も、テレビでやるもんで、一応興味がありますもんで、いろいろ聞いたんですけれども、そしたら、週刊誌に書いてあるように、見張りをしていただけとか、運転をしていたんだ、僕は関係ないんだというようなことを言っていました。

−それで、そんな話を聞いて、どんなふうにそれを。

そのときも、また私をわざと驚かすのかなというような感じのほうが先でしたね。

−本当に彼がやっているという感じは受けなかったんですか。

ええ、だれかほかのものがやったことを聞いて、それを自分で言っているんじゃないかというような感じを受けましたね、最初のうちは。とても信じられないもんですから。言ったって、そんなことのできる子じゃないというのも・・・わかっていましたから。

−一明さんの性格について、何か昔と変わっているとか、あるいは、何か性格上で変化が感じられたようなことはありますか。

ありますね。

−どんなことが変わって来たというふうに思いますか。

製薬会社に勤めているときとか、中学時代、高校時代のことも入れてですが、ちょっと、元の一明じゃないなという印象を受けました。

−それは、どんな点でそんなふうに思われたんですか。

あの当時よりも大人になったというか、やり手になったというか、何かたまに思ったことがあるんです。こいつ、生意気になったなと。でも、いつもじゃないですから。思ったことはありました。

−悪いことをやるとか、そういうことにあまり抵抗がないとか、そんな性格が悪くなったという感じではないんですね。

ええ、そうじゃないんです。

−ただ、大人になって、いろいろな物事がよくわかるということですか。

はい、そうですね。神経質になったというか、ゆったりさが少しなくなったというような感じがしました。まあ、それは徐々に戻りましたけれども。

−そうすると、塾の経営も順調にいって、あなたたちとゴルフなんかをするといったときは、もう昔の彼と変わらないというようなことですか。

また、全くすなおな。すぐ戻りましたもので、ああ、これが本当の一明君だなと思いました。

−そういう彼が、まさかそんな大それた事件をやっているということは、あなたとしては信じられなかったというお気持ちですね。

はい。まだ去年くらいまでは、だれかの身代わりで、お金なんかもらってわざと名乗っているのじゃないかというのを、うちの家内と、まあこれかばかみたいな話ですけれども、ちょっと相談したことあるんですよ、ごはんを食べながら。いや、そんなことないわな、そんな漫画みたいなことを言ったら笑われるなと言っていたんですけれども。

−その去年というと、もう彼が警察の方に行ってからあとのことですか。

ええ、あとのことです。

−そういうときでも、あなたとしては信じられないというお気持ちで、証人になったということですか。

はい。それで、今、なるべくうちでは、もう一明君の話はしないようにしています。家内がもう、かわいそうだといって泣くのが見られないもんですから。

(中略)

−Jさんのお答えですと、とても今でも信じられないというような話なんですけれども、本当に今、一明さん、こういう事件をしたということとすれあ、あなたとしては何が原因でなってしまったというふうに、今思っていらっしゃいますか。

昔の軍隊と一緒で、もう命令一貫で、いやでもやらなきゃならない。私のいとこも軍隊にいて、いろいろ話を聞いていますけれども、同じようなものだなと言って、友達と話したこともありますけれども、暴力団でもそうかもしれませんが、一明君の意思は、もうゼロに近いと思いますね。環境と、何かに取り憑かれた何か、そんな気がします。

−少なくともあなたの知る限りでは、そんなことをする素因というか、性格であるというふうには、とても思えない。

はい、とんでもないです。

嘆願書二通示す。

−これは、Jさんがお書きになったんですね。

はい。

(中略)

−これは、佐伯xxさんが作成した名義の嘆願書を示しますが、この嘆願書は養父のxxさんが書いたものですか。

はいそうです。

−xxさんは字が書けないということにもかかわらず、一応ここに文章が書かれてありますが、これはどうして書かれたんでしょうか。

漢字は私がほかの用紙に書いて、こうですよ、裁判の裁はこうですよと教えてあげて、そのとおりに書きました。

−それをなぞって書いたものですね。

はい。

−従って字が少し、見た感じ変なところがあるわけですね。

はい。

−しかしこれは、xxさんが自分の意思に基づいて書いたというのに間違いないですね。

はい、私、字が書けないから、思っていることも言えないし、どう書いたらええやろかと言いましたもので、ならそういうふうに書きなさいと、頭、けがしているからというから、ならそれも書きなさいと言ったら、そういうふうなことを申しましたもので素直に書きました。

(中略)

−被告人が中学二年のときに、家庭状況なんですが、どのような家にすんでいたかはご記憶ですか。

まあ一口に言えば雨が漏るようなうちでした。

−養父母がおりましたね、それで被告人と3人暮らしと、一緒に暮らしていたんでしょうか、同じ屋根の下に。

はい。

−被告人だけ隣にいたというご記憶はないのですか。

部屋が二つあれば隣かもしれませんが、もともとは狭いうちでしたから。四畳半が2つくらい、もう今崩れてありませんけども、その当時僕は古いなと思ったような家ですから。

(中略)

−さきほど、平成二年二月に戻って来て、なにか追われているようなことは気づいたとのことですが、そういう状況の中でも、被告人の家を探してあげたりしたのは、何か被告人をかくまってあげようとか、自分が守ってやろうとかいう気持ちもあったんですか。

まあ一応夫婦で来たもんで、借金取りじゃないと思ったんですよ、何か暴力団のようなもの、自分勝手に考えたんですが、そういう感じを受けましたもんで、じゃとりあえず名前をZという名前にして、ここにすんでおきなさいというわけで、例の(アパート名)にお願いしたんです。

(中略)

−彼の話をすると、奥さんがかわいそうだと言ってなくということをおっしゃいましたけれども、かわいそうだというのはどういう趣旨でおっしゃっているんですか。

さっきも話したように、まだ本人が犯人じゃないと思っておるんです。そんな感じでものを言うんですよ。

−あなたとしてはもうご存知ですね。

はい。私はもう今はもう、とにかく、泣くんです。話を出すと泣くんです。かわいそうだと言って。

−被告人がかわいそうだと。

はい。

−あなたとしては、こういう事件の犯人だということで、こういう裁判になっていることはご存知なわけですよね。

はい。

−オウムというものは、世間からいろいろ批判もされたというのはご存知ですよね。わざわざこの証人に遠くから出てこられた、今のあなたのお気持ちはどうなんですか。

複雑なんですけど、とにかくお願いできるなら裁判長様にお願いして、なるべく少ない刑を賜っていただきたいと思います。

−あなたは被告人を間近に見たというのは、久しぶりのことなんですね。

はい。

−どんな気持ちがしましたか。

まず元気でよかったというのと、・・・さっき涙が出そうになりました。

−社会的にはいろいろ言われている事件であるけれども、その犯人であるけれども、あなた個人としては、そういう強い気持ちがあるということですか。

はい、もうやったことはいいことじゃないですけれども、本当に本人の意思ではないというのがありありと分かるもので。

(中略)

−(検察官)養子だからもっと暖かい親の愛情に飢えているとか、そういう感じはしませんでしたか。

ないですね、むしろ前の親ですね、養子に出した親のほうを逆に憎んでいました。

−なんと言っておりましたか。

まだ一歳にもならないのに、なんで私を養子に出したんだろうかと、もう信じられない、連絡もないし、普通なら電話の一本でもあってもいんだけれどもということは言っておりました。

−形の上で一人っ子になるわけですね。一人っ子だから大家族というのか兄弟とか、そんなのにあこがれているとか、そういうふうな感じは見受けられたりしたことはありますか。

いや、それはないです。一人だから寂しがるようなこともなかったです。

−それから先ほど家が貧困だったという話が出たんですけれども、貧困だったことが被告人の性格に影響を及ぼしているとかいう感じはありますか。

いいえ、私なりの考えですが、逆によかったんじゃないかというような印象を受けます。苦学して一生懸命勉強して、親に頼らず自分のお金で高校を出て。自分でほとんど生活しておりましたから。

(中略)

−特に(養父母と)仲が悪いとかそういうことはなかったんですね。

はい、ございません。

−麻原彰晃という人、知っておりますね。

はい。

−かつて麻原のことを、何か言っていたようなことをお聞きになったことはありますか。

あれは人間じゃない、あれはもう動物以下だということはよく聞きました。

(後略)

以上。

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